「調べる根性」に火を点けたインターンシップ ――商社シンクタンク勤務 山田良平《OBOGインタビュー》

山田良平[やまだりょうへい]さんは、1992年にアイセックに入会されました。アイセック青山学院大学委員会の委員長もお務めになり、4年次には休学してアイセックのインターンシップに参加されました。そのような山田さんの学生時代のご経験やこれまでのお仕事について伺い、学生に向けたメッセージを頂きました。

――現在の会社でのお仕事について教えてください。

  
 現在は商社傘下のシンクタンクに勤めており、多様な情報を調べて分析し、文章や図表にまとめて説明する仕事をしています。具体的には、米国の政治や貿易を担当しています。例えば、今トランプ大統領が進めている貿易政策の話、中国の関税のこと、北米自由貿易協定(NAFTA)という米国、メキシコ、カナダの貿易交渉のことを調べ、どのような影響があるかを説明する仕事です。

――現在の会社に入る前は、どのようなお仕事をされていましたか。

  
 大学を出たときは最初、政府系機関に勤め、その調査の部署にいました。日本企業の海外の活動や、海外の企業の日本での活動における貿易投資に関係する機関で、その中に調査部門があります。年間の各国の貿易投資の動きをまとめた「白書」を執筆したり、ニューヨークに5年半ほど駐在して原稿を書いたりという仕事をしていました。1つの職場で20年近く働いた後ですからなかなか珍しいですけれど、3年前に民間企業に飛び出て転職しました。そして、現在も経済や政策の変化をビジネスに反映させる仕事をしています。

――現在のお仕事のどのようなところにやりがいを感じますか。

 私の仕事は調べごとをし、それらをまとめ、貿易と投資にどのような影響があり、どのような点に注意するべきかを説明するものです。米国については新聞報道も多く見られますが、新聞が報じていない重要な面も多く存在します。それらを商社向けにきちんと発信していくことが、自分のやりがいや、自分の果たしている役割なのだと思います。その延長で、商社からの問い合わせがあったり、新聞記者からコメントを求められたりすることもあります。普段の蓄積・自分の仕事の結果として様々な人から意見を求められることも、自分の仕事のやりがいというか張り合いのようなものに繋がっています。

 

――お仕事をする上で意識されていることはありますか

 多くの人は新聞やテレビ等の報道を通じて情報を得るので、それらと同じことを書いても意味がないですよね。実は新聞には書いていない事情がある、あるいは新聞が報じているよりも長期的な視点でみると別の事情が見えてきます。そのような違いを見せてなるほどと思ってもらえるような報告を書くように意識しています。

インターン先での山田さん

インターン先での山田さん

――学生時代のことについて、アイセックに入会したきっかけや、活動の中で印象的だったことを教えてください。

 最初はただ同級生にくっついてアイセックの説明会に行きました。私は国際政治経済学部でしたが、最初はクラスの半分くらいがアイセックに入っていましたね。入会した頃は、自分も含めて複数のサークルに入る人が多く、そのうちに自分に馴染むか馴染まないかが見えてくる感じでした。説明会の中では、インターンシップの話が印象的でした。東京大学の学生でアイセックのインターンシップを利用し、1年間休学してアメリカの保険会社に行った人の体験談を聞き、学生のうちに社会人の立場で働けるのは面白いなと思いました。また、アイセックの活動では、海外から来るインターン生と関わり、空港に迎えに行ったり、海外インターン生を連れて国内企業で短期研修を受けたりしたことなどが印象的ですね。

――山田さんご自身も休学して海外にインターンシップに行かれたということですが、その経験が現在のお仕事に活きているなと思うことはありますか。

 オランダの保険会社で7カ月間のインターンシップを経験しましたが、そこでの活動が今の仕事の「調べる根性」の原点になりました。現地日系企業の顧客ケア業務を行うと同時に、オランダにある日系企業の進出理由についてレポートを書く仕事を与えられました。そこで、図書館へ行ってオランダの日系企業について調べたり、実際に企業に訪問して進出理由を聞いたりして、資料も使いながらまとめ、最後には会社の人たちにプレゼンをしました。その結果、欧州の中間に位置し物流環境面で都合が良いこと、英語が通じること、それから税制の面で他の国と比べて優れていること、この3つがオランダに日本企業がくるメリットだとわかりました。そのようなレポートを作ったことで自分の「調べる根性」が芽生え、今の仕事の火を点けることに繋がったと思っています。
また、高校生が大学に入る前に学園祭を見に行くように、社会に出る前に実際に社会人の立場になって働く経験は貴重だなと思ったので、4年目で休学してインターンシップに行って、それから仕事を探すという決断をしました。学生のうちに自分の仕事を社会人の眼で見ながら考えることができたので、インターンシップに行けたことは大きな意味を持っています。

――今、学生がやっておくべきだと思うことを教えてください。

大学院に行ってもいいですし、そのまま先生になるという前提でもいいですし、あるいはNPOで働くのもいいでしょうし、企業といっても国内にずっといるのか、海外に行くような仕事がしたいのか、と色々あると思います。いずれ自分が卒業したときに、どのような世の中に出ていきたいかをイメージして、そのために活動するのがいいのではないですかね。やはり、勉強は疎かにしない方がいいと思います。これは、学校の勉強というのもそうですし、世の中で何が起こっているかを捉え、それに対して賛成か反対かと、その理由を説明できるようになってほしいです。世の中に出ることをもっと意識した活動を心がけ、自分が社会人になったらどのような社会に出ていきたいのかをよく考えるべきです。例えば、ネットニュース等で1日1つだけ記事を見てみてください。どのような記事を見たのかが頭に残れば、理解できなくてもいいと思います。それを将来に再び見たときにパッと記憶に蘇ることがあると思います。一例ですけども、ニュースを見ることで自分の興味分野がわかると思います。自分の生活の周りから意識する世の中の問題について、まずは目を向けてみるのもいいのではないですかね。就職活動開始時期の問題とか、消費税引き上げの問題とか。

――山田さんにとってのリーダーシップとは何ですか。

 アイセックでのリーダーシップというのは2側面あって、大勢で1つのことを達成するという面と、1人で1つのことを試すという面があると思います。1つ目については、私は3年生で委員長を務め、委員会を運営し、副委員長たちと分担して組織を束ね、次の世代に繋ぐということができました。同時に、2つ目として、インターンシップでは1人で働く経験ができました。例えば、オランダへ行けば自分がアイセックメンバーや委員長であったことは関係ないんです。会社からしてみれば、あなた日本から来たんでしょ、あなたは何ができるの、何を顧客に説明できるのと、それが問われるんです。その2つに挑戦できるのがアイセックの場だと思います。
リーダーシップについて、アイセックで活動していた頃によく言われていた標語で今でも意識しているもので、”If you are not part of the solution, then you are part of the problem”という語がありました。要するに、あなたが解決の一部分になっていないのであれば、あなたは問題の一部なのかもしれない、という語です。それはかなり過酷な語で、貧困問題やテロの問題等が色々世の中で起こっているときに、自分がその全ての解決策の一部になれるのかという命題があります。実際には多分難しいだろうと思います。しかし、”If you are not part of the solution, then you are part of the problem” というのは、そうであることを認識して物事に接することが重要だと思います。自分が解決策を出し得ない問題はあって、それなのに「解決策である」かのようなふりをして接し、適当なことを言うのは示すべきリーダーシップではないでしょう。自分が解決策を出し得る/得ない問題を認識すること、それがリーダーシップだと思います。解決策を出し得ない問題に無理な当事者感を出し、首を突っ込まないのが私の行動原則です。ちょっと変わった答えかもしれませんけれど、アイセックに在籍した時から変わらない考えです。

2018.10.18