「組織に頼らず学び続け、自らキャリアを創ることを普通に。」――株式会社電通ワンダーマン 齋藤彰人さん《OBOGインタビュー》

「転職」が当たり前になってきている現代。2003年にアイセック青山学院大学委員会で委員長を務めていた齋藤彰人[さいとうあきと]さんも様々なキャリアを歩んできた1人です。今回は委員長を務めていた齋藤さんだからこそ話すことのできる、キャリア観や、今の自分に活きているアイセックでの経験についてお話を伺いました。

――現在のお勤め先について教えてください。

 株式会社電通ワンダーマンという広告会社にいます。この会社は、電通と、世界の広告会社ランキング1位のWPPグループに属し実はDigital Agency Ranking世界5位(2017時点)のワンダーマンとの共同設立会社になります。ワンダーマンは世界60か国に175オフィスを持っているのですが、日本での展開と電通との戦略的提携に基づき設立された会社がこの電通ワンダーマンです。外資系広告代理店とも言われています。ここに僕がいます。

 ちなみに、広告会社というとイメージどんな感じですか? CMを打つとか、テレビや雑誌に広告をたくさん出すイメージだと思うのですが、実はそのイメージをしている広告って日本独特の広告の概念だと思いまして、アメリカの広告代理店、つまりエージェンシーって少し違うと感じています。僕たちは顧客の育成ステージに合わせ、詳しく言うと潜在層、見込客層、顕在層、ロイヤル顧客層の各々に対して貢献します。具体的にはその各ファネル上における最適なマーケティング戦略の構築、コミュニケーション施策の立案、システム開発、実施運用等を一貫して、コンサルティングそしてエージェンシーとしてのサポートを通じ提供し、クライアントに貢献します。

――齋藤さんはその会社の中で、どのようなことをしているのですか。

 マーケティングコンサルタントです。具体的には企業の課題を特定したり、マーケティングという文脈で戦略を立案したり、顧客データ分析、ユーザーインサイト把握、コミュニケーションのプランニングを実際企業に対して提供しています。あとは広告媒体選定や運用、WEB制作など形になるものもしますね、まあこれが昔ながらの広告のイメージだと思います。加えて強調したいのが、通常の広告会社は広告を出したい会社から頼まれて広告を出し、請求の費用面として終わりだと思いますが、僕らはコンサルティングを大事にしているので、基本クライアントに常駐します。だから僕はクライアントの会社に行って社内に入れてもらって、社員の1人として働いています。そのため、僕らの収益は”フィー”と言われています。どれだけの時間をその会社のために働いたかで収益をもらいます。これを稼働と呼んでいます。1時間あたりウン万〜十万円、みたいな。テレビCMを打った枠の費用の何%かをもらうのではなく、どれだけクライアントために働いたかという時間でもらう。実は海外の広告会社はお金を”フィー”でもらう形が一般で、電通ワンダーマンは外資系でもあるので同じ形を取っています。

――齋藤さんは現在のご職業になるまで、いくつかの会社に勤めていたそうですが、どのようなお仕事をしてこられたんですか。

2006年に社会人になったのですが、2005年から2006年まで株式会社ライブドアで学生インターンをしていました。その会社で事件(※ライブドア事件・・・ライブドアの2004年9月期年度の決算報告に虚偽の内容を掲載したとする疑いが持たれるなど証券取引法等に違反したとされる罪で当時の取締役らが起訴された事件。)があり、離れることになったので、当時取引先だった会社に就職することにしました。そこがデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)で、2007年春まで勤めました。ここは株式会社 博報堂のデジタルメディアに特化したグループ会社です。そして2007年の春から2010年までの約3年間は株式会社リクルートにいました。リクルートの中でも、人材領域と言われるリクナビやリクナビネクストという転職サイトを事業運営する会社だったのですが、どちらかというと僕は転職・中途採用支援寄りの部署にいて、そこで企画営業をしていました。このときもプランナー、いわば営業みたいな部署にいました。そして2010年の春から2013年末までグリー株式会社というソーシャルゲームの会社にいて、そこでマーケティングプロモーション本部に主に所属しました。グリー自体の広告の企画や、インターネット広告の出稿、広告企画などを行いました。そして2014年春から現在まで電通ワンダーマンという会社にいます。

――なぜそんなにたくさん転職しようと思ったのですか。

 結果的に転職という形に繋がったのであって、回数が多いことが良いことだとは全く思ってないですが、背景となる考え方はあると思っています。
僕は「自分が勤める会社にキャリアをつくってもらう」みたいな意識や概念があまりありません。会社が自分を育ててくれるという風には思わないようにしています。育ててもらうというよりは、自分でキャリアをつくるという意識が強くあります。

そう思うようになった原体験はライブドアでの学生インターンです。会社は突然何かが起きてなくなりうるんだということを感じました。その時のショッキングな原体験があったからこそ、これからは自分で自分のキャリアや何を学ぶことを決め、どんどん自分を高めていかないといかんな、というふうに思いました。自分のキャリアをデザインしていく中で、どこで働くのがいいのか、という観点で考えています。ずっと1つの会社で働くという概念が壊されたので。

DACという会社を1年で辞めちゃうというのも、早いと思うんですよ。しかしDACにはどんどんクライアントがきて、自然に仕事ができる。つまり自分でクライアントをとる、まさに営業という経験をしていなくて、「自分は大丈夫なのかな?」と悶々としていました。だからリクルートに転職を決めました。

リクルートで3年間働き、自分でクライアントをとってくる、という経験を得られました。しかし3年間やって、次の成長機会はなんだろう?と思い始めたときに、インターネットのベンチャー企業で事業を一緒に成長させていく環境に身を置きたい、と思ったんですね。そういったインターネット系の急成長中の会社に入って自分の経験を活かしたいと。

そうして入社したグリー(GREE)では、広告やマーケティングなど様々な経験をさせてもらいました。グリーを人に知ってもらい会員数を伸ばすためにどうしたら良いのかというマーケティング領域で働き、すごく良い経験ができました。しかしそこから3年半くらい経ち、業績や事業環境が変化する中でマーケティングに求められることも変わり、自分の仕事の幅が狭められてくるのを感じました。また、そもそも急成長する会社で働くことが目的だったので、既に大きな会社になっているグリーを出てもう1つステップアップするときなのかもしれない、と思いました。

それでは自分はこれからどういう存在になっていけば良いのか、と考え、出てきたのがマーケティング領域を専門にしたプロフェッショナルを目指すということでした。様々な会社のマーケティングや広告、コミュニケーションの課題を解決できるような専門性の高い人材になっていきたいと思うようになり、それが叶う、かつ縁があった今の会社に入りました。

 

振り返れば、自分で自らのキャリアをつくらなきゃいけない、と思っていたのがやはり大きかったです。キャリアやスキルは会社から計画頂くものだと思う人も多くいるかもしれません。ただ、このときにそうじゃないと踏み留まり、どういう環境に身を置くことが、自分の果たしたいキャリアに近づくかと考えたことが功を奏したようです。結局キャリアというのは、ある時期ある時期の選択の連続なんですよね。

――仕事のやりがいと大変なことはありますか。

仕事のやりがいが変わってくることが、やりがいです。この仕事の大切なこととか、この仕事において果たさなきゃいけないこととか、この仕事で成長できることは何かとか、その1個1個の役割や仕事に対して何がやりがいなのか、そのやりがいを見出していくことが、やりがいなんです。

逆に大変なことは、1つ1つミッションが違うから、何がポイントかを考えてそこで成果が出せるようになるまでは大変です。評価する上司も変わるし、会社が求めていることも変わるじゃないですか。それに適応するまでの期間が大変かもしれないです。

――仕事をする上で大切にしていることを教えてください。

3つあります。

1つ目は結果を出すこと。結果というのは、自分が勤めている会社における結果もそうだし、クライアントに対する、プロジェクトを通した結果もそうです。

2つ目は、常に成長し続けること。自分ができることや自分の目線、自分のスキルなどが成長していかないと、できる仕事も変わっていかないじゃないですか。転職をしていく中で、目指すキャリアや会社に行くために何が必要か、どうなっていなきゃいけないのか、というのを考える機会があったので、常に自分がどう成長しなきゃいけないか、ということは今でもずっと考えていますね。

3つ目が常に変化側にいること。変化は常に若い心から起きると思います。社会を変えていくには、まず会社を変化させていく側にいなければ、と常に思うようにしています。

共通して言えるのは、どの姿勢もアイセックで学んだということです。結果を出す、事業成果を出すこと、成長し続けること、変化をしていくこと。働く会社や組織が変わっていくように、アイセックも僕にとっては1つのキャリアなんですよ。だから別にアイセックもリクルートもグリーも電通ワンダーマンも変わらないなと思っています。アイセックの経験も、学生という立場にいながら、ある組織に身を置いていたキャリアだと。課題に対してより試行錯誤したのは社会人になってからかもしれないですが、ただ、アイセックも自分のキャリアの一部だというその意義に学生時代に気付けたからこそ、アイセックにいた意味は大きかったかもしれないです。

――アイセックに存在意義はあると思いますか。

 あると思います。アイセックを通じて成長している自分がいるし、アイセックを通してインターンに行く人もいますし、そういう意味で若者がアイセックというプラットフォームを通じて成長してきている事実から、存在価値はあると思います。ただ、これからの時代でアイセックが目指すべきものは、その存在価値をどれだけ高めていくかだと考えています。アイセックに直接関わる人にしか価値を知られていないのが問題だと思います。
例えば総理はアイセックの価値を感じているのか、各国大統領は感じるのか、近くにいる大学学長は感じているのかと考えると、アイセックはまだまだ社会的価値が十分にあるとは言えないと思います。アイセックってものを体験した人はそりゃ価値あるものだと思っているけれど、結局それ以外の世の中で、青学生や、アイセックと直接関わっていない人は存在価値を感じているのか。そもそもアイセックを知っているのかという議論などにつながります。これからは、アイセックは社会にとって本当に価値があると思われているのかを考えていく時だと思います。アイセックに関わった人達だけに価値があると言ってもらうことに満足するのではなく、アイセックが直接関わる人以外の人達が、少しずつでもいいからアイセックは今の世に必要な存在だと思ってくれるようになってくれたらいいなと思います。

――もう一度自分がアイセックに戻って活動するとしたら何をしますか。

 「僕は戻るというか、今こそがアイセックなる者なのか」とも思っています。つまり、メンバーとして輩出された1人として理想の社会を築いていこうとしているから、アイセックが本質的に果たしたいことを一助ながら志向し、またアイセックの理念に共感し続けています。

――もし、学生時代に戻れるとしたら、アイセックの中で何をしますか。

 青学の各学部における海外インターンシップをすべてアイセックが運営します。今は国際政治経済学部や国際交流センターが運営するインターンは他の会社に委託していますが、その委託先もアイセックが全制覇することですね。そうしたら、多少存在価値はあるんじゃないでしょうか。1個の学部でできたんだから、可能性は0ではないでしょう。

(※2017年、青山学院大学の地球社会共生学部において、アイセックのインターンに参加すると、単位互換できる制度ができました。)

――将来成し遂げたいこと、野望は何ですか。

日本をクライアントにしたいです。今思うと現役時代、アイセックは僕にとってのクライアントでした。クライアントであるアイセック青山学院大学委員会から、お前に1年間時間を委託してやるからやってくれないかと頼まれた、という感じで活動していたんです。ちゃんと活動として結果と成長を求め、変化側にいるというのを、このクライアントのためにやっていたなと思うんです。その“アイセック青山学院大学”だったクライアントとしての幅やスケールがもっと大きくなり、“日本”になったら嬉しいです。それが野望ですね。

――受験を終え、大学に入って何をしようか考えている高校3年生にメッセージをお願いします。

これからは、“今”の社会を見ることが大切だと思います。大学で学ぶことも大事ですが、それとは別に。今の社会、それは、決まりきった社会ではなく、常に変化している社会です。例えばこの会社に行けば良いとか、こういう風になっていけばいいんだよ、といった決まった流れじゃなくて、その時々で流れの変わる社会です。みなさんのお父さんやお母さんの時代は決まった流れが大きく、大学時代に遊んでいてもよかったかもしれませんが、これからは学生のうちに社会を観ながら学ぶことが必要だということです。

そして、社会を観ながら行動する経験と学問を組み合わせて学び得たいと思う人がいるのであれば、アイセックをおすすめします。アイセックに入れば、何もしなければどうなっているかわからない社会の”今”が垣間見えるかもしれません。何が社会で起きているのか、社会で何が問題となっているのか、そういうことを見ながら自分の将来を決めていくほうが、これからの変化の激しい時代に有利だと思います。

・リーダーシップ発揮度★★★★☆

今度新しいプロジェクトを立ち上げ、社長やマネージャーといった大勢の人々の前でプレゼンをし、会社の在り方について提言したことがあったからです。社会に影響を与えるような、組織に提言をしコンサルティングをする役割ができているとはまだまだ言えないので5には至りません。自分の提言によって、社会がガラッと変わるようなキーとなる所が世の中にあると思うんです。社会を動かしているところにプロジェクトとしていれてもらう、やらせてもらうということをモットーにしていかなければ、と思います。

・グローバル感★★★★☆

そもそも資本が約半分ワンダーマンという外資。
この会社の方針は日本人だけで決められていない。ワンダーマンの人も一緒に決めていて、常に両者の変化がお互いの変化になる。ただ、海外の支社で働いているわけでもないので、5ではないですね。持論としては、会社にいると、別に日本も海外と同じなんですよ。自分の中で大切にしているのは、この会社をこういう風にしていったらいいのではないか、というのを電通とワンダーマンという会社にもっと提言する存在になれれば、4から5になれるかもしれないです。

・社会への影響力★★★★☆

理由は2つあります。1つ目は、自分が担当しているクライアントのサービスや製品の認知度が高く、多くの人が使っているからです。それを使っている人たちが何十・何百・何千万人といて、自分の提案がそれだけのクライアントに影響する可能性があると考えると、自分の仕事に影響力を感じます。2つ目は電通のグループ会社としての影響力です。働き方という意味で注目を集めてしまい、勤務形態なども変わりました。自分も身を正し、社会人として働き方や生活面を反省し、直さなければならないと痛感したからこそ、社会的な影響度を感じました。

2017.11.6