「お菓子で人を繋ぐことが、世界中が幸せになるための1歩」――スイーツアーティスト 綾部暁奈《OBOGインタビュー》

現在“スイーツアーティスト”としてご活躍されている綾部暁奈[あやべあきな]さん。ご自身の拘りと信念に基き、現在のキャリアとアイセック青山学院大学委員会に所属していた大学生の頃について語ってくださいました。

相手に合わせたスイーツをアートする

――綾部さんのお仕事について教えてください。

 主にお菓子教室の講師と、オーダーのあったお菓子を作ることをしています。
 お菓子教室は、知り合い若しくはその知り合いの紹介限定で、参加者の希望に沿って和菓子と洋菓子の両方を教えています。参加者から「これを作りたい」という希望を貰ってから、その人のレベルに合わせてレシピを選び、失敗が少なくてやりやすいように材料の配合や作り方を考えて調整して、レッスンをします。
 またお菓子のオーダーも、知り合いからのみ引き受けています。結婚式やイベントで配るお土産としてアイシングクッキーを作るような依頼が多いです。

——今のお仕事を始めた経緯を教えてください。

 特別この仕事を選んだというわけではなく、周りの人が自然とこの仕事をさせてくれたという感じです。ただ、この仕事を始めることになったきっかけは、結婚をしてロンドンに行ったことでした。
 2011年の春に結婚をし、それを機にロンドンに引っ越しました。その時に、せっかくロンドンに行くなら現地でしかできないことがしたいと考え、以前から興味を持っていたシュガークラフトを習うことにしました。

日本でも学びたいと思っていたんですけど、日本ではただの習い事として扱われていて、イギリスと違って仕事にはならないので躊躇していました。そこで本国にいくことになったので、現地のカレッジで週に1度行われるコースを受講することにしたんです。学び始めると、そもそもシュガークラフトは誕生日や祝い事のケーキをデコレーションするために学ばれるものだと改めて気づき、ケーキを作るコースも受講することにしました。
 そのうちに、現地では食べられない日本のケーキ、例えばショートケーキやチーズタルト、モンブランなどを作ってほしいと友達から相談を受けるようになりました。そのような期待に応えて喜んでもらえるのが嬉しくて、様々なスイーツの作り方を勉強するようになりました。そうしているうちに、オーダーだけでなく、作り方を教えてほしいと言われるようにもなり、今のお菓子教室を開くという形になりました。

——お仕事のやりがいや楽しいことを教えてください。

 相手が喜んでくれることです。たまに、クッキーを170枚作ってほしい、というようなオーダーを受けることがあり、それを作っているときは大変です。寝不足になって辛いと思うこともあります。しかし、実際に渡して喜んでもらえると、その大変さも、やってよかったなと思えます。

——逆に、嫌になることはありますか?

 ないです。嫌だったらその仕事を引き受けないですからね。そこが個人ビジネスのいいところです。ただそもそも私は知り合いからの依頼しか受けていないので、スケジュールが合う限りは断ることもありません。寝不足で辛いことはありますが、それは嫌なこととは違う。
嫌だ、嫌いだと思ったら人生つまらないじゃないですか。嫌だなと思うことがあるなら、それをどうしたら嫌じゃなくできるのかを考えないと人生面白くない。そう考えて気持ちや考えを向ける方向を変えると、嫌いなことってなくなると思うんです。
だから、寝不足で辛いと思うことはあるけど、嫌ではない。今の仕事で嫌なことはありません。

——仕事をする上で意識していること、大切にしていることはありますか。

 常に期待以上のものを提供すること、習ってきた先生たちに敬意を忘れないことを心掛けています。
 期待以上を心掛けるというのは、例えばサンプルを5枚作ってみてほしいと言われたらそれ以上作ること、レッスンを開くときは昼食を用意することなどです。ただし、これは私の好意でやっていることなので、勿論代金は貰いません。来てくれた人が、残念だったな、損したな、と思うのはすごく嫌なので、どうしたら来てよかったと思ってもらえるかはいつも考えています。
 自分が習ってきた先生に敬意を忘れないというのは、私が開くお菓子教室やオーダーのお菓子に必ず代金を貰うということです。最初の頃は自信がなかったのでケーキを作っても教えてもお代はいらないと言っていました。しかし、私もプロに習ってきたので、それを無料で提供するということは、そのプロの人たちに失礼なんじゃないかと思うようになったんです。また、お金を貰うことで私もプロとしての仕事をしなければならないという緊張感も生まれるので、今では代金を貰うようにしています。その代わり、その代金に見合った以上のものを提供します。

アイセック青山学院大学委員会のクッキーを作ってくださった暁奈さん(右)

アイセック活動の中で気づいた、リーダーの形

——アイセック在籍中にどのようなことをしていたのか教えてください。

 1年目は送り出し事業局のメンバー、2年目はその統括として活動していました。入会したのは2002年なのですが、そのとき青山学院大学委員会でNGOにインターン生を送り出すプロジェクトを立ち上げた人がいて、その人の活動を引き継ぎました。1年目は海外のNGO団体にインターン生を送り出し、2年目は統括としてメンバーのやりたいことができる組織作りに取り組みました。

——アイセックを知ったきっかけと、入会した理由を教えてください。

 アイセックを知ったきっかけは新歓の時期に友達がチラシを貰い、私が向いていそうだと勧めてくれたことでした。
 入会を本格的に決めたのは、高校までに自分がしていたこととアイセックの活動が繋がりそうだと思ったからです。私が通っていた中学や高校はキリスト教系の学校だったこともあり、普段から献金や募金活動をしていて、それを用いて海外や国内の恵まれない人たちの援助をしていました。そのようなことが自然にある環境にいたので、大学でもその延長で恵まれていない人にプラスになることがしたいと思っていました。アイセックではそれに近しいことができると感じ、入りました。また、英語がずっと好きだったけど、ストイックに英語を学ぶだけのサークルとは異なり、アイセックでは海外の人とも触れ合えて社会にも貢献できるというところにも惹かれました。

——活動する上で意識していたことや、大切にしていたことは何ですか。

 昔からずっと意識していたのは、世界中の皆が幸せになってほしい、ということです。それがインターン生を送ることで叶うのであれば、1人でも多く送り出そうと思っていました。私は自分がしたいことよりも、誰か相手がいて、その人に喜んでもらいたいと思うことで動くタイプなので、そのために活動するということを大切にしていました。

——アイセックの活動で一番良かったことを教えてください。

 人との出会いです。アイセックでは同じ委員会だけでなく、他の委員会や社会人とも出会えます。
一緒に活動していたメンバーとはとても強い繋がりを持つことができました。その人たちとの交流はずっと続いていて、今でも定期的に集まっています。今は皆全然違うフィールドで働いたり生活したりしていて、それぞれの場所で頑張っているということがとても刺激になるし、支えになります。アイセックを通して出会った人たちが、私の財産です。
アイセックで得られる出会いは、国内に留まりません。アイセックの特徴は世界中にネットワークを持っていることで、それが好きなところでもあります。大学のサークルでそのような特徴を持っているところはあまりない。他国からインターン生を受け入れると、皆で観光に行き、交流関係と視野を広げることができました。

——では、一番大変だったことは何ですか。

 2年目に統括を務めたときに、チームをまとめなければならないのが大変でした。私は皆の希望を叶えるチームにしたかったので、皆から意見を貰おうと思っていました。でも1年生は私にもっと引っ張っていってほしいと思っていたんです。その考え方の差がわかるまで、どう進めたらいいかわからず、苦しみました。
 しかし苦しんだ分、勉強にもなりました。私は人の意見を形にするのが一番いいと思っていたけど、必ずしもそうではない。高校までで様々なリーダー経験をしてきたので私はトップに立つのが得意なのだと思っていたんですけど、そうではなく、私は誰かがしたいことをサポートして形にしてあげるのが得意なのかなと気づきました。アイセックに入っていなかったらそれは学べなかったと思うので、大変な思いをしたこともよかったと思います。

——その体験も踏まえて、綾部さんにとってのリーダーシップとは何ですか。

 皆の意見を取り入れるべきだというのは変わっていません。だからこそ、引っ張ってほしいというのが皆の意見なのであれば、そこは自分が思ったことを押し付けることも、ときには必要なんだと思います。臨機応変にできる、というのが大事なのかな。その決断によってリーダーが叩かれることがあるのは当たり前だと思うんです。私は、皆に好かれる、皆がいいと思うようにしたいと思っていたけど、時には嫌われることも必要なんだなと思いました。皆から意見は聞く。聞くけど、その上で自分がどうするか、チームをどうしていくかはきちんと決めて皆に提示する。それがリーダーの役目であり、リーダーシップなんだと思います。

人が繋がることで、世界中に幸せを

——将来やりたいことや成し遂げたいことはありますか。

 世界中に友達を作りたいということです。これはもうずっと昔から思っています。少し甘い考えなのかもしれないけど、友達がいる国とは戦争をしたくないじゃないですか。その人が死んじゃうかもしれないから。だから世界中に友達がほしいし、皆にもそう思ってほしいです。甘い考えだとしても、そう信じたい。
 そのツールとして、お菓子は幸せを運んでくれるものだと思っています。お菓子って、なくていいもので、贅沢品だけど、だからこそハッピーを届ける力がすごく強いものだと思っています。また、お菓子が繋げてくれた縁はたくさんあったから、これからも大切に作り続けていって、それで誰かを幸せにしたいと思います。そして例えば私がしたレッスンを通して誰かがお菓子を作り、それがその人の周りにも届いて、人と人を繋げてくれたらいいなと思っています。それが世界中に友達を作る1歩目になると思うから。

——では最後に、大学生にメッセージをお願いします。

 たくさんの人に会って、たくさん話してください。それは国籍を問わず、本当にたくさんの人と。英語が下手でもいいから、とりあえず外に自分の想いや考えを出してください。出せば出しただけ上手になるし、出したらその分だけ返ってきます。出せばその分誰かがまた入れてくれるので、自分から出すものを惜しまない方がいい。自分のほしいものややりたいことを誰かに話すことは、小さなことかもしれないけど、その積み重ねが大事なんです。どこで何が繋がってくるかは後にならないとわからないから、「この人とは直接関係ないかもしれない」「呼ばれた会があるけどあまり魅力的に思えない」と思わずに、まずたくさんの人に会って話をして、そこから何かを拾ってほしい

リーダーシップ発揮度 ★★★★★

>>お菓子教室で先生をやるときに生徒に指示をしてまとめなければいけないし、時間内に終わらせないといけない。プロとしてそれをやっているという意識から、評価は5であるべきだと思っています。

グローバル感 ★★★★★

>>今までイギリスやフランス(短期留学)でお菓子作りを学んできたこと、今他国にいる友達がSNSを通して自分のお菓子に興味を持ってくれること、お菓子が世界にいる友達を繋いでくれることから評価は5です。

社会への影響力 ★★★★☆

>>お菓子を通して世界を幸せにしたいと思っていて、そのお菓子が届く範囲が今だんだん広がってきている。これから中国や韓国で店を持っている友達と協力して海外でも和菓子を教えていくという展望はあるけどまだ国内に留まっているので、評価は4です。